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  • 執筆者の写真Nob K.

シンプルで豊かな風景写真が示すもの

更新日:2018年3月12日

CARLETON E. WATKINS (American, 1829-1916) “Arbutus Menziesii Pursh” 1861 Albumen print

今日の”LOOKING AT PHOTOGRAPHS”からの紹介は、CARLETON E. WATKINSによる一本の木の写真です。

1839年にはまだ写真家と呼べる者はいませんでした。その時にいたのは写真という技術を確立するために実験していた者達だけです。しかしその10年後には、ちょっとした街にはダゲレオタイプの写真館が存在するようになります。様々な職業から写真家になる者がでましたが、科学や芸術に関係していた者はほとんどいませんでした。

CARLETON E. WATKINSもそんな転身して写真家になった一人です。彼はサンフランシスコのデパートの店員でしたが、1854年にダゲレオタイプ写真家のR. H. Vanceのスタジオに雇われ、そこで写真の基礎を学びました。その14年後、彼は the Paris International Expositionで風景写真部門で1位になり、その後、半世紀近く活動しました。残念なことに、彼の作品の多くはサンフランシスコ地震の際の火災で焼けてしまいました。

多くの写真家が被写体を求めて遠くまで出かけるのに対して、彼はサンフランシスコ近くのヨセミテ渓谷とマリンポーサ・グローブ(ヨセミテ南部のセコイアの森)の巨木を18x22インチのガラスの上に焼き付けるだけでした。彼の撮影道具を運ぶためにはラバの荷車が12台も必要だったそうです。

彼は被写体についても良く研究していて、写真のタイトルにも植物学上の名前をつけています。この写真の木は一般的な呼び名では”Strawberry Tree”です。

彼の残された写真は、彼の生きた時代と場所の歴史的・科学的な記録で、明瞭さ、緻密さ、詳細さをもち、論理的でありました。この”Strawberry Tree”は日本の国旗のようなシンプルな構図でありながら、辞書のような情報の豊かさを持ち合わせている作品ではないでしょうか。

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