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執筆者の写真Nob K.

温かい視線のストリートスナップ

JOHN THOMSON (British, 1837-1921) “Old Furniture” From Street Life in London. 1877, Woodburytype

今日の”LOOKING AT PHOTOGRAPHS”からの紹介は、JOHN THOMSONによるストリートスナップです。

THOMSONの写真集”Street Life in London”は、これまでの写真とは異なって古代のモニュメントや偉大な戦争、有名人を扱うのではなく、身分の低い、どこにでもいる貧しい人を扱っていました。THOMSONのこの写真集が発行されて100年以上が経ちますが、写真の被写体は劇的に変化してきました。これまで貧しい人を被写体とすることは、写真家にとってある種の定番になりました。しかしながら、今日においても、THOMSONの作品のように、街中の普通の人びとを、公正に、客観的に、上品に、感傷的ではない思いやりを持って描いている写真集は数多くはありません。彼の視線は、人々を見下すことなく、貧しい人の一人であることを主張することも、代弁することもなく、ただ、優しくそしてちょっと引いた感じのものでした。そんな彼の限定的な視座であっても、写真としては非常に正確で、かつ、写真の本質に達する高いクオリティーを持ち合わせるものでした。

彼の写真集は、36枚の美しいWoodburytypeから構成され、男性、女性、花売り、ゴミ収集人、ストリートミュージシャン、靴磨き、清掃者、その他多くの露天商のメンバーを写していました。また、彼の素晴らしい写真に書き添えられたAdlphe Smithによる解説も、とても内容豊かでした。このような彼のストリートスナップは、社会的効用、経済、テクノロジー、哲学、政治そして道徳とさえもつながりがあると言えるものでした。

今日の写真を見てみると、タイトルの通り、古い家具とそれを売る人とその客らしき女性が写されています。彼の写真集の解説によれば、当時の中古家具屋は、破産した人から安く家具を買い集め、あるいは借金の差押えとして家具をとりあげ、それを協力者とともにインチキオークションで価格をつり上げて売りさばいたり、金持ちのみに良い値段で売りさばく商売をしていたとのことです。当時は新品の品質の怪しげなものより、良質な中古品の方が高く売れていたそうです。

そんな解説とともに、談笑をしているようにも見えるこのストリートスナップを眺めると、なかなか面白いですね。また、彼の控えめで優しい雰囲気のストリートスナップは、近年の迫力のあるストリートスナップとも異なりますが、これはとても貴重な作風のように思います。


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